1903年の「大列車強盗」以来、1960年代までハリウッドは数々の西部劇を作り続けて来たが、その真髄はいかにも失礼な命名ではあるが、いわゆるB級西部劇にこそあるのではなかろうか。荒々しさの底に流れている詩情、流れる雲の下に広がる壮大な景色は、まさに映画の醍醐味を満喫させてくれる。1930年のモノグラム・ピクチャーズに始まり、1935年にはモノグラム出身者により、ジョン・ウェインをスターとしてリパブリック社が設立され、1946年にはモノグラムの傘下のもとにアライド・アーチスツ社が誕生した。南北戦争を背景にした作品が目立つが、時代劇であるからモデルとなった実在の人物が登場するのも西部劇の特徴である。開拓者としてのダニエル・ブーン(1734-1820)とディヴィー・クロケット(1786-1836)。ワイルド・ビル・ヒコック(1837-1876)、ワイアット・アープ(1848-1929)、バット・マスターソン(1850-1921)は映画の上では3大保安官。宿命の対決が伝説的な保安官パット・ギャレット(1850-1908)とならず者ビリー・ザ・キッド(1859-1881)。義賊ジェシー・ジェイムズ(1847-1882)にインディアンでは知らぬ者のないジェロニモ(1829-1909)。女性ではヒコックとのロマンスが噂された男装の兵士カラミティ・ジェーン(1850-1903)に射撃の名人アニー・オークレイ(1860-1926)が有名である。西部劇が広く受け入れられて来たのは、アメリカ国民の持つ正義感、フロンティア・スピリッツに拠るが、最近は人種差別問題が障害となってほとんど製作されることがないのは寂しい限りである。参考文献:明治書院刊「西部劇紳士録」。


 テキサス決死隊(1936)  大平原(1939)
 フロンティア・マーシャル(1939)   オクラホマ・キッド(1939) 
 地獄への逆襲(1940)   ヴァジニアの血闘(1940) 
 北西騎馬警官隊(1940)  西部魂(1941)
 無宿者(1945)    最後の無法者(1945) 
 サン・アントニオ(1945)  追跡(1947) 
 月下の銃声(1948)   廃墟の群盗(1948) 
 アパッチ族の最後(1949)  死の谷(1949)
 ダラス(1950)  ミズーリ横断(1951)
 勇者のみ(1951)  決斗!一対三(1953)
 無頼の谷(1952)  遠い太鼓(1952)
 スプリングフィールド銃(1953)  裸の拍車(1953)
 ブラボー砦の脱出(1953)  ホンドー(1953)