ヨーロッパ映画が力をなくしてから久しいが、そのきざしはサイレント映画初期の時代まで遡ることができる。フランスのモーリス・トゥールヌール、ドイツのエルンスト・ルビッチ、フリッツ・ラング、パウル・レニ、F.W.ムルナウ、スウェーデンのヴィクトール・シェーストレームたちのように、ヨーロッパで成功した監督の多くは、自ら進んであるいは招かれて早い時期にハリウッドに渡っているからである。もっとも、トゥールヌールはMGMの首脳と仲違いをして、スティルレルはガルボを伴って渡米したが彼自身は芽が出ず失意のうちに、またシェーストレームはアメリカ的な製作方法が肌に合わず早々にハリウッドを去っている。アメリカでは1930年代半ば頃まで存在していたスター・システムが絢爛たる世界を作り出していたが、ヨーロッパでは機能していなかった。このスター・システムが終焉を迎えた頃に渡米して成功したのがアルフレッド・ヒッチコックである。中小のスタジオが知恵を絞って紡ぎ出す手作りのヨーロッパ映画は、現代の大作映画全盛時代においてはハリウッドには叶わないのかも知れない。サイレント期のアヴァン・ギャルドや1960年代に始まったヌーベル・バーグに代表される小粋なヨーロッパ映画が復活する日が再び巡ってくるのだろうか。ルネ・クレール、ジュリアン・デゥヴィヴィエ、ジャン・ルノワールを生み出した映画発祥の地フランスと、戦後、ネオ・リアリズム映画で数々の名作を輩出したイタリアにはとくにがんばって欲しいものですね。 |