思いがけない仕種や行動から誘われる滑稽さを文字で表すことは至難の業と言えよう。その意味でコメディはまさに映像向けの表現方法であり、映画の誕生直後から主要なジャンルを占めていた。実際、リュミエールの”水をかけられれた水撒き人””雪合戦”(共に弊社発売の「フランス映画の誕生」に収録)にその片鱗が感じられる。やがて映画がプロットを持つようになり、スラップスティック・コメディ専門の会社であるキーストン社を設立したマック・セネットが登場する。彼の考案したキーストン警官隊、ベージング・ビューティズ(水着美人)は名物キャラクターになった。ロスコー・アーバックル、メーベル・ノーマンド、ベン・ターピンなどが活躍するが、何と言っても一番の売れっ子はチャーリー・チャップリンである。彼はその後、エッサネイ社、ミューチュアル社を経てダグラス・フェアバンクス、メリー・ピックフォード、D.W.グリフィスと共に1919年、ユナイテッド・アーチスツ社を設立。キートンは遅れてキーストン社に入るが、彼もまたアーバックルに誘われてアル・セント・ジョンと共に独立することになる。この2人にロイドを加えて3大喜劇王と称されている。やがて迎えるトーキー時代とサイレント期にまたがって活躍したのが”極楽シリーズ”のローレル&ハーディである。彼らをはじめとして2人組のコメディ・チームが人気者になり始めた。”腰抜けシリーズ”のビング・クロスビーとボブ・ホープに”底抜けシリーズ”のディーン・マーチンとジェリー・ルイス、”凸凹シリーズ”のルー・アボットとバッド・コステロたちである。一方、異色のコンビとして兄弟3人組(当初は4人)のマルクス兄弟のナンセンス・ギャグも見逃せない。 |
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